投稿日:2026.8.23 ブランディングデザイン専門家 春山瑞恵
「良いロゴを作れば、もっとお客さんが増えるはずなんだけどな・・・」
会社を経営していると、ふとそんな風に感じる瞬間はありませんか。
名刺交換をするたびに、なんとなく自社のロゴに自信が持てない。ホームページを見返すたびに、他社と比べて見劣りする気がする。かといって、何をもって「良い」と言えるのか、正直よくわからない。誰に相談すればいいのかも見えてこない・・・。
実は、こうした悩みを抱える経営者の方の多くが、最初の一歩でつまずいています。それが「ロゴ」と「シンボルマーク」の違いを知らないまま、なんとなくデザイン会社やデザイナーに依頼してしまうことです。
「格好いいものが欲しい」「自分で考えたアイデアをプロに仕上げてもらいたい」「できるだけ安く済ませたい」、そう思うのは当然のことです。ただ、そもそも、その言葉が指すものを正しく理解していないと、依頼の仕方も、デザイナーとの会話も、すべてかみ合わなくなってしまいます。
この記事では、デザインの専門知識がまったくない方でも理解できるように、「ロゴとは何か」「シンボルマークとの違いは何か」を、身近な例えを使いながらわかりやすく解説していきます。読み終わる頃には、これから依頼する際に「何を、どう頼めばいいのか」がクリアになっているはずです。
- ロゴとシンボルマークの違いが分かる
「文字」と「図形」、それぞれの意味の違いを整理できます。 - ロゴマークの成り立ちが分かる
2つがどう組み合わさるのかを具体例で理解できます。 - 依頼で失敗しない考え方が分かる
曖昧な依頼になりがちな原因と、その避け方が分かります。 - ブランドの一貫性の大切さが分かる
使い分ける際に押さえるべきポイントが分かります。
そもそも「ロゴ」とは何か?
まず、多くの方が誤解しがちなポイントからお伝えします。実は、この言葉には明確に区別された使い方があります。
本来の意味
英語版ウィキペディアの解説によると、この言葉(logo)はもともと「ロゴタイプ(logotype)」の略語であり、公的な識別や認知を助けるために使われる図案・エンブレム・シンボルを指す言葉とされています。つまり、本来指しているのは、会社名やブランド名を図案化した「文字」のことなのです。
例えるなら、手書きのサインを思い浮かべてみてください。有名人のサインは、その人の名前を独特の書体・崩し方で表現したものですよね。あれこそが「ロゴタイプ」の原型です。会社名やブランド名を、専用にデザインされた文字(書体)で表現したもの——これが本来の意味になります。


代表的な例
代表的な例で言えば、Coca-Cola(コカ・コーラ)や Google の文字部分がこれにあたります。絵や図形ではなく、あくまで「文字のデザイン」であることがポイントです。
《出典》Logo(Wikipedia) https://en.wikipedia.org/wiki/Logo
「シンボルマーク」とは何か?
一方の「シンボルマーク」は、それとは根本的に性質が異なります。
定義
国内の弁理士による解説サイトでは、シンボルマークとは、会社・団体・家系・個人などを象徴する図案のことと定義されています。つまり、文字ではなく「絵」や「図形」で会社やブランドを表現したものが、シンボルマークです。
代表的な例
わかりやすい例を挙げましょう。Apple の「かじられたリンゴ」、Nike の「スウッシュ(チェックマークのような曲線)」、Twitter(現X以前)の「青い鳥」——これらはすべて文字を含まない、純粋な「絵・図形」です。これがシンボルマークです。
海外のデザインメディアの解説でも、ロゴが「言葉」であるのに対し、シンボルは「絵」であるという整理がされており、この区別は世界共通の考え方だと言えます。 言葉で覚えるなら、こう考えるとシンプルです。
- ロゴ = 文字のデザイン(例:会社名を格好よくデザインした文字)
- シンボルマーク = 絵・図形のデザイン(例:会社を象徴する絵や記号)
合わせて読みたい関連記事:知名度を上げるシンボルマークとロゴタイプの組み合わせ見本
では「ロゴマーク」とは何を指すのか?

ここで多くの方が混乱するのが、「ロゴマーク」という言葉です。日常会話ではこれらの呼び方がほぼ同じ意味で使われがちですが、専門的には別物として整理されています。
定義
国内の特許事務所の解説によれば、ロゴマークとは、ロゴタイプとシンボルマークを組み合わせたものを指すのが一般的とされています。つまり、
- ロゴタイプ:文字だけのデザイン
- シンボルマーク:絵・図形だけのデザイン
- ロゴマーク(コンビネーションマーク):文字と絵・図形を組み合わせたデザイン
この3つを合わせて、広い意味で「ロゴ」と呼ぶのが実情です。
具体例:スターバックスの場合
たとえば、スターバックスの例を思い浮かべてみてください。緑色の丸の中に人魚のイラスト(シンボルマーク)と、かつては「STARBUCKS COFFEE」という文字(ロゴタイプ)が組み合わさっていました。まさにこれが「コンビネーションマーク」の典型例です。
海外の専門メディアでも、シンボルと文字を組み合わせたものは「ブランドマーク」や「コンビネーションマーク」と呼ばれると説明されています。
つまり、「ロゴが欲しい」と一言で言っても、それが「文字だけの洗練されたデザインが欲しいのか」「シンボルとなる図形が欲しいのか」「その両方の組み合わせが欲しいのか」によって、依頼すべき内容も、デザイナーが提案すべき方向性もまったく変わってくるのです。
なぜこの違いを知らずに依頼すると、失敗しやすいのか

ここまでの内容を踏まえると、経営者の方が制作でつまずきやすい理由が見えてきます。
たとえば、次のようなケースに心当たりはありませんか。
よくある失敗パターン
- 何が自社に合うのかわからないまま、なんとなく依頼してしまう
- 「格好いいものが欲しい」とだけ伝えて、あとはお任せにしてしまう
- 自分で考えたアイデア(ラフ案)があるので、それをプロに仕上げてもらい、費用を安く抑えたいと考える
- どのデザイン会社に頼めばいいのかわからず、比較検討だけで時間が過ぎてしまう
- こだわりたい気持ちはあるのに、何にこだわればいいのか自分でも整理できていない
- 「一度作ったものを、あとから何度も修正すれば、そのうち良いものになるはずだ」と考えてしまう
実はこれらの悩みの多くは、「ロゴタイプが必要なのか」「シンボルマークが必要なのか」「その組み合わせが必要なのか」という、そもそもの前提が整理されていないことが原因で起きています。
美容院に例えると
美容院でヘアスタイルをオーダーするときのことを想像してみてください。「なんとなくおしゃれな感じにしてください」とだけ伝えれば、仕上がりのイメージが美容師さんとずれてしまい、何度もやり直しが必要になるかもしれません。それよりも「顔まわりを軽くして、清潔感のあるビジネススタイルにしたい」という軸があれば、美容師さんとの相談もスムーズに進みます。
考え方は同じです。「文字だけで洗練された印象を作りたいのか」「覚えやすい図形で認知を広げたいのか」という軸が最初に決まっていれば、デザイナーへの依頼内容も、修正の方向性も、格段に明確になります。逆に言えば、この軸がないまま何度修正を重ねても、根本的な方向性がぶれたままなので、なかなか納得のいく仕上がりにはたどり着けないのです。
だからこそ、依頼する側があらかじめ言葉にできていなくても、対話をしながら方向性を一緒に整理し、提案をしてくれるデザイナーを選ぶことも大切です。腕の良い美容師さんが、お客さまの要望を引き出しながら似合うスタイルを提案してくれるように、そうした姿勢で向き合ってくれる相手であれば、安心して任せられるはずです。
ブランドイメージの一貫性が重要な理由

もう一つ、見落とされがちな重要なポイントがあります。それは、ロゴは単体で存在するものではなく、名刺、ホームページ、看板、封筒、SNSアイコンなど、あらゆる場所で使われる「会社の顔」だということです。
商標に関する専門家の解説でも、ロゴタイプとシンボルマークを別々に使用する予定がある場合には、それぞれを個別に商標出願することが推奨されると説明されています。これは裏を返せば、多くの企業が用途によってこの2つを使い分けているということです。
場面によって使い分ける
たとえば、名刺やホームページのヘッダーでは文字入りのロゴマークを使い、SNSのアイコンやアプリのアイコンではシンボルマークだけを使う、といった具合です。制作の際に「文字と絵の関係性」や「単体で使ったときの見え方」を考慮せずに作ってしまうと、こうした使い分けができず、場面によっては見た目が崩れたり、ブランドイメージがちぐはぐになってしまったりします。
一貫性がもたらす効果
一貫性があることで、お客さまは「あ、あの会社だ」と一目で認識できるようになります。逆に、印象がバラバラだと、どれだけ良いサービスを提供していても、信頼感が積み上がりにくくなってしまうのです。集客がうまくいかない背景には、こうした「見え方の一貫性のなさ」が静かに影響していることも、決して少なくありません。
依頼するときに意識しておきたいこと
ここまでの内容を踏まえて、実際に依頼する際に意識しておくと良いポイントを整理します。
1. 欲しいものを言語化してみる
「ロゴタイプ」「シンボルマーク」「ロゴマーク」のどれが欲しいのかを、まず自分の中で言語化してみましょう。完璧に決める必要はありません。「文字だけで洗練させたい」「覚えやすい図形が欲しい」「両方欲しい」という程度のイメージで十分です。
2. 使う場面をイメージする
名刺、看板、SNSアイコン、封筒など、実際に使う場面を思い浮かべると、必要な要素が見えてきます。
3. 方向性合わせを大切にする
「修正すれば何とかなる」ではなく、最初の方向性合わせを大切にしましょう。修正はあくまで微調整のためのものです。根本の方向性がずれていると感じたら、修正を重ねるより、一度立ち止まって軸を整理し直す方が、結果的に近道になります。
4. 予算感や希望を率直に伝える
信頼できる相手には、率直に予算感や希望を伝えましょう。「安く済ませたい」「自分の案をブラッシュアップしてほしい」といった希望は、決して悪いことではありません。むしろ最初にはっきり伝えることで、デザイナー側も的確な提案がしやすくなります。
まとめ:正しい理解が、納得のいく仕上がりへの一番の近道
ここまで、両者の意味と違いについて解説してきました。
- ロゴタイプは「文字」のデザイン
- シンボルマークは「絵・図形」のデザイン
- ロゴマークは、その両方を組み合わせたもの
この基本を押さえておくだけで、デザイナーとの会話は驚くほどスムーズになります。「なんとなく格好いいものが欲しい」という漠然とした依頼から、「自社にはどんな要素が必要か」を自分の言葉で説明できる依頼者へと、大きく一歩前進できるはずです。
会社の「顔」となる存在は、一度作って終わりではなく、これから何年も、あなたの会社と一緒に歩んでいくものです。だからこそ、焦って決めるのではなく、まずは今日お伝えした基本を踏まえて、ご自身の会社にとって本当に必要な要素は何かを、じっくり整理することから始めてみてください。
正しい理解を持って一歩を踏み出せば、きっと「納得のいく仕上がり」、そして「一貫性のあるブランドイメージ」にたどり着けるはずです。あなたの会社が、これからさらに多くのお客さまに選ばれる存在になっていくことを、心から応援しています。





















